日経新聞にこんな記事がありました。「東京都心部の新築マンションが高騰している。地価に加え、建材価格が上がったため。こうした価格上昇に主力購買層である団塊ジュニアがついてこれず、契約率が下がっている」。これって、どう受け止めますか?
以前契約率が下がってきているのは、「売れ残りが増えているのではなく、潜在ニーズが今も高いため、業者サイドが無理して価格を下げずに売り渋っているから」という説明がありました。確かに都内の超一等地であれば、そういう売り渋る物件もあるのでしょうが、実情は前者ではないでしょうか。
購入者のニーズがあっても、手の届かない価格になっては諦めざるを得ません。手に届きそうな価格だから「もう少し頑張って」と購入する気にもなり、ブームを呼んだのだと思います。
株式投資で悪循環に陥るケースは、自分が投資した株価や自分が投資した株価が付けた高値にこだわって「株価の値上がりを祈る」気持ちが強くなるときです。市場は「あなたがいくらで投資したか」なんて誰も配慮してくれません。その株式が今、割安か割高かを冷静に判断するだけです。
そして多くの場合、値動きがその後何度もあるわけですが、「まだまだ」と売る決心が付かず、塩漬けにして長く持つことになります。本当は今の価値を検討し、割高だと思えば、たとえ自分の投資した金額に届いていなくても、売却をした方がよいケースもあるはずなのですが。
したがって、建てれば売れると、割高な土地を取得し甘い建築見積もりを立て、販売時には割高な価格になってしまった新築マンションの価格。「この価格で売れないと損が出ちゃうんです。何で買ってくれないのか」と購入希望者に突きつけて買われなくても、それは購入者のせいではありません。業者の自己責任です。
このような取得価格コストの高騰を販売価格の値上げに転嫁した結果、売れ行きが鈍るケースがこれからもっと増えるのではないでしょうか。バカ高い食料品にも賞味期限、消費期限があります。時間が経てば安くしても売れなくなります。バカ高い製品。次々新しい代替商品が出てきます。消費者は多少質を落としても手の届く価格帯の商品を選ぶようになります。
バブルがはじけた後の絵画・骨董品。「以前だったら億の値段で取引されたものなんだけど今は購入者の考え方次第。最終的には売れないと意味がないから」。無い袖は振れない。そんな世の中がヒタヒタと近づいているような気がするのですが。