最近、竹村健一氏がテレビ番組で「他の国が既にやっているように、日本も外貨準備等の国家資産の運用を積極的にやって利益を上げれば、消費税の引き上げをしなくてもすむ」とコメントするのを何度か聞くたびに、「こんな人が私のクライアントなら断るなあ」と思って聞いていました。
ソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)。国富ファンドとも呼ばれています。主に対外資産を対象とする、政府が直接的・間接的に運営するファンドで、有名なところではアブダビ投資庁やクウェート投資庁、シンガポールの政府投資公社テマセクがあり、中国、ロシアも注目されています。
実際先行して始めたSWFの実績はかなり良いものでした。空前の世界同時株高、資源高、不動産高を享受してきたわけですから、当たり前といえば当たり前の実績です。しかし、これからも、この延長線上ですばらしい成績が期待できるのでしょうか。個人的には、SWFを推進して高値で売り抜けるための受け皿として期待している存在があるのではと疑っています。
たとえ運用知識、能力、経験が備わったプロであったとしても、どんな環境でも常に勝ち、良い成績が上げられるわけではありません。「もし私にお任せいただければ安心です。確実なリターンを保証します」なんていう奴が出てきたら、真っ先に疑わなければなりません。
私の知る限りですが、優秀で経験豊富な投資家であればあるほど、「さきのことは誰にもわかりません」と相場を甘く見る人はいません。非常に謙虚な人が多いです。
もしかしたら、竹村健一氏のまわりには、「私に任せれば消費税をゼロにしますよ」というアドバイザーがいるのでしょう。もしかしたら竹村氏も「運用のプロに任せればそんなことも簡単だよね」と思っているのかもしれません。もし実際の竹村氏が「プロだったら当然」と期待する人であり、私のクライアントだったらゾッととします。
(これはすべて想像です。事実確認はありません。あしからず)
相場で損をしようものなら、大変なトラブル客になってしまうかもしれません。その人との、せっかくの縁も、損をきっかけに切れてしまうかもしれません。投資はプロの助言があっても損することは必ずあるのです。それを理解してもらう前に助言を行うのはお互いに不幸な結果を生んでしまいます。
竹村氏がコメントするように、現在の日本におけるSWFの先行きに対して、私はまったく楽観した見方はできません。時期尚早。絶対慌てて対応してはいけないことだと考えています。
日本国の外貨準備をこれから積極的に運用し、もし2割も一瞬で損をしたら、誰が責任を取るのでしょうか。そしてどんな責任が取れるのでしょうか。
今の国会や厚生省、防衛省の問題解決の流れを見る限りでは、「そもそも誰がSWFを推進したんだ」と損が発生してから責任の所在を確認する無責任なことになるのは目に見えています。責任がないお金が、これまでどんな使われ方をして、どんな結果を招いてきたかは、われわれ国民は痛いほど知っています。
「日本がその気になって外貨準備の運用をやってくれないかなあ」と熱い視線を向けている人が必ずいます。「私に任せてもらえば悪いようにしません」という人ではないでしょうねえ?