今月の視点 2022年10月

金利上昇の先が見えたら債券投資に妙味あり

●米国の景気後退、利下げは24年に

米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%利上げを決定し、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.00~3.25%にしました。3%を超えるのは2008年1月以来、14年半ぶりです。

同時に公表したFOMCの参加者によるFF金利見通しの中央値は、22年末時点で4.4%、23年末時点では4.6%に引き上げられました。

つまり、年内残り2回(11月、12月)のFOMCで計1.25%、翌23年にはさらに0.25%の引き上げを見込んでおり、利下げを行うのは早くても24年以降という見通しを示したことになります。

こうした見通しを示した一方で、「次の決定会合での0.75%の利上げを決めたわけではない。今後の経済データ次第」と突き放し、これまでのようにマーケットに配慮して事前にFRBの考え方を示すことはないようです。

マーケットは「米国景気が後退していく」前提で、厳しい投資環境に取り組まなければなりません。FF金利は市中の金利の基準となる政策金利です。FOMC参加者の見立て通りに進むことを前提にすれば、FF金利が22年末から23年を通して4.4%~4.6%の高止まりで推移するわけですから、借入金利はさらに高い水準となって調達が難しくなり、借り入れてまで投資するニーズの急減速は確実です。資金繰りのために、株式や不動産などのリスク資産を売却する動きも出やすくなるでしょう。

0.75%の利上げを受けて、米10年国債利回りは6月の3.5%よりも高い4.0%台まで、2年国債利回りは4.3%台まで上昇しました。
米株式市場ではダウ工業株30種平均が3万ドルを割り込み、年初来安値を更新しました。

●債券投資に妙味、積立投資は増額を

FF金利の高止まりを受け、株式等リスク資産の値上がりを期待する投資の動きは慎重になるでしょう。一方、保有しているだけでFF金利より高い配当利回りや金利が期待できるインカムゲイン狙いの投資対象に、資金が向かう傾向が強くなると思います。

ただ、金利はどこまでも上昇していくわけではありません。景気後退の色が濃くなり、インフレの数字が落ち着きを見せるときが来れば、今度は金利低下が始まります。

FOMCの参加者が想定する23年のFFレート4.6%が当面の上限と見れば、米2年国債の利回り水準はだいぶいいところまで来ています。つまり、来年の金利上昇分を先取りして動いているということです。従って、年内2回の利上げが実施されると、金利の高止まり状態はしばらく続きますが、景気後退を先読みした金利低下がいつごろから始まるかという、上昇基調から低下へ移るきっかけ待ちの段階に入っていくでしょう。

債券投資は金利が高く、低下に向かうときがチャンスです。破綻リスクと金利水準のバランスを見ることが大事ですが、配当利回り・金利水準の高い投資対象は魅力的です。

株式投資は当面、金利の高止まりで不遇な投資環境が続くという覚悟が必要ですが、積立投資をこれまで継続してきた方は、「株価は下げすぎた後の反発が大きい。株価が下げたときこそ積立投資が力を発揮する」と前向きに考えて下さい。

つみたてNISAで人気のある銘柄「ひふみプラス」に、2020年8月から1万円ずつ積立投資を行った場合のパフォーマンスを参考に見てみましょう。コロナ禍で先が読めなくなり、この時期に積立投資を開始した方も多いと思います。

今年に入ってからの株価の下落で積み立てた元本のマイナスが続いていますが、気にすることはありません。株価の下落局面がいつまで続くかは誰にもわかりませんが、いつかは終わります。過去の経験から、株式の積立投資は報われない時間が長いほど、その後、数年間にわたって、債券などのインカムゲインの投資では得ることができない高いリターンを得られる可能性があります。

現在のように、積立投資で成果が出ていないときこそがむしろチャンスだと、積立額の増額を検討しても良いと思います。