2025年、為替は1ドル200円もあり得る
2024年11月5日の米大統領選でトランプ前大統領の優勢が伝わると、ドル円為替は1ドル151円台から156円台まで円安・ドル高が進みました。トランプ次期大統領が掲げる政策が、米国にインフレを再燃させる恐れがあると反応した結果だと言われています。
邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を引き下げる、日銀は金融政策決定会合で政策金利を引き上げる、それにより日米金利差が大幅に縮小するのではという思惑から、今度は1ドル149円台まで円高・ドル安になりました。
最近の為替相場はこのように短期間に大きく動くことが多くなっています。来年のドル円相場の見通しもマチマチで、1ドル180円とまだまだ円安が続くという専門家もいれば、1ドル130円台に戻っていくという専門家もいます。みなさんは2025年のドル円為替をどう予測しますか。
ドル円の3つの為替変動要因
1983年から2024年11月末までのドル円の為替レートと年間の変動幅の推移を見ると、年間の変動幅は小さくて10円、大きいと40円以上、平均で20円程度であることがわかります。
私は今後のドル円為替は、次の3つのポイントに対するマーケットの見方次第で大きく変わってくると思います。
- 米国がドル高を望むのか、ドル安を望むのか
- 米国の政策が重視するのは、インフレ抑止なのか、深刻な景気後退の回避なのか
- 3%以上開いた日米長期金利の金利差がいつまで続くのか
米国では以前のような高いインフレ率の数字が落ち着いてきたので、現在はインフレ抑止よりも、景気のソフトランディングを意識している政策を取っているように見えます。
逆に言えば、FRBはドル安によるコストプッシュインフレを警戒し、当面はドル高を容認するスタンスだと私は思います。インフレを抑えつつ、景気の安定を目指すのでしょう。
②については、現在、米国景気のソフトランディングを重視している政策のため、マーケットでは連続した政策金利の引き下げを行う金融緩和期待が先行しやすいです。
一方で、堅調な株価の推移、衰えない個人消費、下げ止まる物価上昇など、インフレ再燃の懸念が高まると、金利低下を織り込みすぎた反動で金利が反転上昇、それに伴い株価が急落する局面になるかもしれません。2025年はより値動きの大きな不安定な投資環境が続くと想定します。
日米金利差が大幅に縮小するまで続く円安・ドル高基調
米国がドル高を容認している間は大きく円高・ドル安に振れたとしても短期間で終わるでしょうし、日米の大きな金利差が存在する限り、円安・ドル高基調は続くと思います。
日本政府と日銀にとっては、円安によるエネルギー・食料の価格高騰は看過できず、2025年も円安を牽制するために為替介入や政策金利の引き上げを行うことになるでしょう。しかし、これまでと同様に、為替介入も政策金利の引き上げも、米国がドル高を容認する限り、円安になるピッチを遅らすだけで持続的な効果は期待できません。むしろ、為替介入したポイントが為替の防衛ラインと意識されて、徐々にマーケットの目が水準に慣れて、さらに円安期待を高めていくでしょう。
現在、私は2025年の円ドル相場を1ドル150円~160円のゾーンを中心に、まず180円に向かい、その後、円安阻止のために日銀が数回、政策金利を引き上げて日米金利差が縮小したら(1~1.5%を想定)、反動で140円程度までの円高・ドル安に向かうと想定しています。
もし日銀の追加引き上げ幅が十分でなく、大きな日米金利差がそのまま残り続けるのであれば、1ドル200円に向かう展開もあり得るかもしれません。
したがって、米ドル建て債券の購入を検討している方は、米国金利が高水準であるうちに投資をした方が良いと思います。大きく円高になることを待たずに、1ドル150円程度でも十分ぐらいの感覚で取り組めば良いでしょう。
2025年は行き過ぎた円安・ドル高の環境で、どんな投資ができるかを考える1年になると思います。
(記2024年12月2日)