米ドル以外で通貨分散したい人にお勧め
期間10年の米国債利回りは、米国の政策金利が11月、12月に大幅に引き下げられること先読みする形で、一時、3.6%程度まで急低下しました。最近では4.2%台に急上昇し、政策金利を0.5%引き下げる前の、7月下旬以来の水準に戻ってきました。
米国債の利回り上昇につれて、ドル円の為替水準も1ドル140円台から153円程度まで円安ドル高が進み、財務省による為替介入の可能性が噂される展開に急変しています。
不安定化するマーケット
今後のマーケットの動向については、専門家の見方もマチマチです。1ドル160円を超える円安を唱える人がいれば130円割れもあり得るという人もいます。
各国の政局が不安定な中で、地政学的リスクの高まりは収まる気配が見えず、マーケットはその時々の材料に対して一喜一憂せざるを得ず、材料のどこにスポットを当てて考えるかの違いで見方がガラッと変わります。
こうした不安定なマーケットがすぐに安定する要因は見当たりません。為替や金利が短期間で大きく上下し、株式等の値動きにも大きな影響を与えるとすれば、投資対象は値動きの大きな株式等ではなく、安心、安全なものを求めたいでしょう。
私は米国債など格付けが高く、高利回りの債券への関心が高まると予想しています。
米国債投資に躊躇する理由
冒頭で述べたように、10年以上の米国債利回りは4%を超えています。
年複利4%で10年間運用すると、毎年4%ずつ増え続けて元本は1.48倍、期間20年なら2.19倍に増えます(税金は考慮せず)。1ドル152円で投資した米国債の元本が1.48倍になるのですから、10年後に1ドル102.70円(=152円÷1.48倍)、20年後に1ドル69.40円よりも円高にならなければ、円建てでの元本価値が守られます。
米国が破綻せず、償還まで保有することができれば、米国債は年複利4%の確定利回り商品です。このように、好条件の債券への投資は、満期まで10年以上などの長い期間のものを選択するのが有利になります。
4%を超える現在の米国債利回りは、FRBがインフレを退治するために、政策金利を短期間に引き上げた結果として生じた金利水準です。今後、インフレが落ち着くにつれて米国債利回りも低下していくと考えるなら、今、米国債は投資妙味ありだと思います。
しかし、金利が魅力的な水準にあることは理解できても、「10年以上は長すぎる」、「1ドル150円の水準からの投資には躊躇する」など、ここからの米国債投資に二の足を踏む声も多く聞きます。さらに円安が進み、1ドル160円になるとか、利回りが4%から大きく低下してくれば、なおさら投資に慎重になるでしょう。
一方、米ドルへの新規投資には懐疑的だけれど、円以外の資産は持っていたほうが良いと考え、通貨分散を検討する人が今後増えると予想しています。
豪ドル建て債券を勧める理由
そこでお勧めしたいのが豪ドル建て債券への投資です。お勧めのポイントは3つあります。
まず、個人が投資できる豪ドル建て債券は大抵5年未満、2年~4年程度の期間が多いのですが、これらの利回り水準は米ドル建て債券とほぼ同水準の4%程度です。
次に、為替推移を見ると、米ドルが110円程度から150円台へと円安になったのと同じ時期、豪ドルは80円程度から100円台と、米ドルに比べて円安への過熱感が少ないと思います。
最後に、豪ドルには米ドルと同様に外貨建てMMFがあることです。償還時に円高であれば、現金ではなく、利息が付く形で外貨のまま保有する手段があることは、外貨建て投資の継続において大事です。
円以外の資産を持ちたいけど米ドルの水準を考えて躊躇している人、10年以上の長期で外貨投資する余裕資金がない人、米ドル以外で通貨の分散を検討している人は、豪ドル建て債券を検討してみてはいかがでしょうか? 米ドルへの投資に躊躇する人が増えるにつれて、今後は豪ドル建て債券への投資に関心が集まると私は思います。