2025年は預金獲得競争の激化が予想される
国債利回りは3%が均衡点か
日銀は、政策金利(無担保コールレート翌日物)の誘導目標を2024年7月に0.25%程度、さらに2025年1月には0.5%程度に引き上げました。
2024年7月の利上げ後、円安進行が長期金利の上昇を促し、長期金利の指標である10年国債利回りは2009年11月以来、約15年ぶりに1.4%台に達しました。
今年2月19日、日銀の高田審議委員は「前向きな企業行動が生じてきたという点で、2%の物価安定の目標に近づいている」「見通しが実現するなら一段のギアシフトを進める局面だ」と発言しました。
これに対してマーケットでは、日銀が政策金利を早期に1%まで利上げするという見方が強まり、さらなる金利上昇への警戒感が広がっています。そのため、投資家は金利上昇の動きに神経質になっています。
実際、個人の方から「金利上昇はいつまで、どこまで続くのか」と質問を受けることが多くなりました。
5年国債利回りがマイナス金利からプラスに転じた2022年8月末以降の30年国債、20年国債、10年国債、5年国債の利回り推移をみると特に注目してほしいのは2023年7月の出来事です。
日銀はそれまで10年国債利回りの上限を0.5%として、それを超える金利上昇があれば国債を無制限に買い付けて金利を抑制していましたが、この上限を1%に引き上げました。
その結果、10年国債利回りは0.5%程度から上昇基調に転じ、20年、30年国債利回りはすでに2%台に乗せて3%を目指す動きになりました。
2024年6月に10年国債利回りが1%台に乗せた時点で、私は1.7%までの上昇を予測しました。
現在の10年国債利回りは1.4%ですが、今後さらに1.7%まで上昇すれば、20年、30年国債利回りが3%を意識する水準まで上昇する可能性が見えてきたのです。
金利はどこまでも上昇し続けるわけではなく、行き過ぎた水準まで上昇した後は妥当な金利水準を模索して下落する時期が訪れます。
それでは、上昇が抑制されて均衡するのはどのくらいの金利水準なのかを考えてみましょう。
私は、期間を問わず、国債利回りにおける均衡点は3%程度だろうと考えています。国債は国内で最もデフォルトの心配のない安全な円建て資産で、為替リスクもありません。
その国債への投資で確実に3%のリターンが得られるのであれば、大きな下落リスクのある株式投資よりも、円安水準で米ドル建て資産に投資して円高リスクを心配するよりも、安心と考える投資家は多いと考えるからです。
現在、30年国債は10年国債よりも先行して上昇し、すでに利回りは2.5%程度に達しています。したがって、国内の長期金利の上昇余地は0.5%程度であり、ここからさらに大きく上昇する可能性は小さいと考えます。
そのように考えるのは、次のようなメカニズムが働くからです。
この先金利が上昇すると考えれば、できるだけ高い金利になるのを待ちたいと考えるので、拘束期間が長い債券ほど敬遠されます。敬遠された長期金利は短期金利よりも先行して上昇します。
そして長期金利が十分な水準まで達すると、長期金利の上昇ピッチが緩み、中短期金利の上昇ピッチが早くなるというわけです。
見劣りする預金金利の成り行き
中期金利の指標である5年国債利回りは、すでに1%台に乗せて上昇ピッチが早くなってきました。これは、個人向け社債の発行条件に影響を与えるでしょう。
2024年は1%以下の条件での発行が多かったですが、国債利回りとの比較から2%以下の条件ではあまり魅力を感じなくなるでしょう。
加えて個人向け国債に注目です。2月募集の個人向け国債の利率は10年変動金利型が0.83%、5年固定金利型が0.89%、3年固定金利型が0.74%でした。今後もしばらくは好環境が続くと思います。
最近、銀行の預金金利の引き上げが喧伝されていますが、個人向け国債の条件と比較すると、現状では銀行預金は大きく見劣りします。
預金者の商品(金利)を選別する目が厳しくなっていますから、預金流出を防ぎたい銀行と、国(国債)、企業(社債)とのせめぎあいが活発になって、預金獲得競争が激化する年になりそうです。