ドル離れの今、米国債への投資を再検討
最近、「ドル離れが進んでいる」「米国債はリスクが高い」と懸念する声を耳にするようになりました。
トランプ政権発足以降、米国は同盟国との信頼関係よりもディール(取引)を重視する姿勢を強めており、従来の同盟国でさえ米国依存を見直す動きが広まっています。その結果、ドルの基軸通貨としての地位が揺らぎ、米国債への投資に懐疑的な見方を持つ投資家が増えているようです。
こうした不安がある今だからこそ、冷静に「米国債に投資する意味」を検討することが重要です。私は、長期・超長期で資産を守りながら増やす運用として、米国債への投資は今でも非常に有効だと考えています。以下に、ポイントを整理します。
●米国債投資に取り組む意義とは
現在、10年、20年の米国債利回りは年利4%を超える水準にあります。以前の5%程度と比べれば低下していますが、依然として高水準を維持しています。
債券は、購入時の条件(利率や償還日など)が満期まで変わりません。価格は市中金利の変動により上下しますが、償還まで保有すれば、元本と利金を確実に現金で取ることができるのです。
債券投資で高利回りを狙うには、金利が高い時期に始めるのが望ましいです。ただし、償還まで発行体が破綻しないことが前提となります。
したがって、ドル離れが懸念される中で、10年後、20年後、無事償還されるかどうかが重要です。
国の信用力は時間とともに変化します。現在の基軸通貨は米ドルですが、15世紀の大航海時代のポルトガル以降、基軸通貨国だったスペイン、オランダ、イギリスを振り返ると、国力の低下に伴い、通貨価値が下がることはありました。しかし、破綻した例はありません。
私は米国の国力が10年、20年で弱まったとしても、基軸通貨覇権国である米国が国家として破綻する可能性は、極めて低いと考えています。 むしろ、20年先まで破綻せず、約束された条件を履行できる発行体として、米国債は最も信頼できる選択肢だと考えます。
「ドル安になると損をするのでは」と心配される方もいます。確かに、ドルを現金で保有するだけでは金利がつかず、インフレや為替変動に対して脆弱です。
だからこそ「米国債」という形で保有することが重要なのです。確定利回りで元本を増やすことが可能なので、長く保有するほど為替リスクを低減する効果が期待できます。
たとえば、年利4%の複利で割引かれる割引債(ゼロクーポン債)を購入すると、10年で元本は1.48倍(=1.04×10乗)、20年で2.19倍になります。仮に1ドル150円で米国債に投資した場合、10年債では1ドル101.35円(=150円÷1.48倍)、20年債では68.49円まで円高になっても元本割れしません。
つまり、現在の為替レートでも、米国債に投資すれば、将来的に円高が進んでも、一定水準まで損失を被らずに済むということです。私は償還時に1ドル100円程度であれば、そのドル資産は円資産の代替として十分価値があると考えているので、現状の金利・為替水準における米国債投資に魅力を感じています。
なお、為替リスクは感覚ではなく、数値で判断することをお勧めします。
●コア資産にふさわしい米国債
コア資産とは、ポートフォリオの中心に据えたい、安定的かつ持続的に資産形成に貢献する資産のことです。米国債は、インカムゲインの安定性、流動性の高さ、信用力の高さと、三拍子が揃っており、まさにコア資産にふさわしい存在です。
短期的な価格変動や為替の振れに惑わされず、長期的な視点で保有することで、資産を守りながら着実に増やすことができます。ドル離れが進む今だからこそ、本質的な価値を見極め、冷静に判断することが求められます。
米国債投資は、確定利回りで資産を増やすための手段です。米国が破綻せず、為替が一定水準を保つと考える投資家なら、長期で守りながら増やすコア資産の運用の選択肢として「検討しないのはもったいない」と私は思います。

