日本版「トラス・ショック」、「高市・ショック」は起きるのか?

●数字の麻痺と、ある「前夜」の記憶

最近、国家の「370兆円投資」や、巨大テック企業の「何百兆円」という天文学的な数字ばかりが飛び交い、私たちの金銭感覚は少し麻痺しているようです。
「借金はいくらしても大丈夫」という楽観論の陰で、いま足元の1ドル162円台の「円安」や、10年国債利回りが3%を超えていく「金利上昇」の可能性に対する政治の緊張感のなさに、私はある強烈な既視感(デジャヴ)を抱いています。

2022年、イギリスをわずか49日で崩壊に追い込んだ「トラス・ショック」の前夜です。

●イギリスを襲った「トラス・ショック」とは?

 

当時のリズ・トラス首相は、「財源の裏付けのない大規模減税」をぶち上げ、「経済が成長すれば借金は返せる」と言い張りました。
しかし、市場(マーケット)は「この国には財政規律がない」と判断。
容赦ない「英国債の暴落(金利暴騰)」と「ポンドの歴史的最安値への大暴落」を引き起こし、政権はすべての政策を撤回させられた挙げ句、一瞬で退陣に追い込まれました。

現在の高市政権の姿勢には、驚くほど共通する「3つの危うい符号」があります。

 

●トラス・ショックと高市政権「3つの共通点」

  1. 「財源は問題ない」という過度の楽観論
    トラス首相が「成長すれば大丈夫」と言い張ったように、高市首相も「過去の低金利国債の猶予がある」「インフレで税収が増えている」と、国債増発への懸念を事実上黙殺している
  2. 市場のブレーキ(チェック機能)の無視
    トラス首相が客観的な財政検証を排除し無視したように、高市政権も日銀の独立性に実質的に介入し、利上げを牽制する動きを見せています。政治の力でマーケットのあるべき修正を抑え込もうとする姿勢は、マーケットの不信感を決定的なものにします。
    たとえば、「10年国債利回りは3%を大きく超えて上昇していく」とマーケットが判断したら、トラス・ショックのように大幅な国債利回りの上昇、円安進行へと一気に走るかもしれません。
  3. インフレ期における「アクセルのベタ踏み」
    「金利がなかったデフレ局面で積極的な財政出動して経済成長を高められなかった」という反省はありますが、 物価が高騰している現状での巨額の財政出動は、市場から見れば「火に油を注ぐ」リスクがプンプンします。さらに、トランプ大統領と約束した巨額の対米投資のために「円を売って、ドルを買う」という巨大な両替需要がさらなる円安要因になっています。

 

「日本は自国通貨建てだから破綻しない」「世界最大の対外純資産国だから大丈夫」というマクロ経済の正論は、あくまで平時の理屈に過ぎません。

市場が「この政府にはコントロールする意思も、具体的な防衛ライン(絵)を描く能力もない」と確信した瞬間、システム的な「日本売り」が始まります。もしそれが起きれば、私たちは将来、「高市・ショック」という不名誉な名を刻む現場に立ち会うことになるかもしれません。