利上げの限界を見透かして進む円安・ドル高

●中央銀行が利上げに向かう背景

2026年6月、マーケットは「世界的な金融引き締めへの回帰」という転換点を迎えました。

主要中央銀行は当面のインフレの高まりを強く意識し、一斉に利上げ方向へと足並みを揃えました。欧州中央銀行が約3年ぶりの利上げに踏み切り、日銀も政策金利を1%へ引き上げました。新体制となった米連邦準備制度理事会(FRB)のウオーシュ新議長は今回は据え置いたものの、年内の追加利上げを視野に入れています。

背景には、中東情勢の緊迫化を起点にした資源・エネルギー価格の再高騰があります。
かつて2021~2022年の歴史的な物価高を一時的と見誤った猛省もありますが、それ以上に、原油高などの影響が仕入れの「川上」から「川中」「川下」へと波及し、いよいよ一般消費者にまで広がりかねない切迫感が共有されているためです。価格転嫁でインフレマインドを定着させたくないという点は各国共通の課題です。

 

●利上げでも変わらない円安ドル高

しかし、同じ利上げ方向に向いていても、日銀が0.25%利上げし、FRBが据え置いたにもかかわらず、なぜ39年半ぶりの円安(1ドル161円台後半)が続き、日本国債の利回り上昇懸念が強まっているのでしょうか。

「政策金利・2年・10年」が示す金利の形状は投資家心理を表しているので参考になります。
日本 政策金利(1.00%) 2年国債利回り(1.40%) 10年国債利回り(2.62%)
米国 政策金利(3.75%) 2年国債利回り(4.15%) 10年国債利回り(4.41%)

政策金利は中央銀行の現在の姿勢、2年国債は政策金利の先行きを反映する近未来の予測、10年国債はマーケットの動きを踏まえた将来の予測です。この3つを並べてみると、現在、近未来、将来の金利動向を探る参考になるのです。

金利予測の解釈は見る人によって異なりますが、政策金利と近未来を予測する2年国債との差が日米ともに0.4%であることから、利上げすれば0.4%程度の金利上昇を織り込んでいると解釈できます。

しかし大きな違いは、米国がどの期間も同水準で横ばいなのに対し、日本は期間が長くなるほど右肩上がりになっている点です。
つまり米国は政策金利を引き上げても10年国債利回りは大きく上昇しない一方、日本は上げると近未来の金利がさらに上昇していく可能性が高いということです。

そのため投資家は、「もっと金利が上昇してから日本国債に投資する」と投資を控える行動を選びやすく、結果として、日本国債売り・米国債買い、円売り・ドル買いが構造的に続きます。

●市場に委ねられる金利の未来

日本国債に投資が向かうには、2年と10年の利回り差が米国のように大きく縮小した時です。

インフレ懸念が強い中で10年国債利回りの大幅低下が期待できないなら、2年国債が大きく上昇する=日銀が政策金利を複数回連続で大幅に引き上げる必要があります。

しかし、利上げに慎重な高市政権の意向に対して日銀の利上げ余地には限定的とマーケットに見透かされ、円売り・ドル高の基調は変わりにくいという見方が広がっています。

さらに、米国のウオーシュ新FRB議長は「金利の先行きは中央銀行がコントロールするものではなく、マーケットの需給に任せるべきとの考え方を示しました。
中央銀行による金利の過保護な誘導は終わり、金利動向は完全にマーケットに委ねられた以上、今後は景気や物価指標のデータに応じて、金利が大きく振れやすくなる局面が続きます。日本も同様に、マーケットが金利を動かす時代に入ったという覚悟が必要です。