「ありえない」が消えた市場――円安・金利上昇が招く「トリプル安」の足音

「ありえない」が少数派になったという現実

相場が動くのに後付けの理由は要りません。何が引き金(きっかけ)になって市場が揺れるかも、事前には誰にも分かりません。

しかし、今の日本の金融環境において、投資家が絶対に目を逸らしてはならない現実があります。

それは、「目先、さらに円安に向かうのは至極当然である」「10年国債利回りは現在の水準(2.8%前後)で止まるはずがなく、上昇基調が続く」という見方が、すでに市場参加者の間で大勢を占めてしまったという現実です。

かつて「1ドル=170円を目指す円安」や「10年国債利回り3%超え」というシナリオは、一部の極端な意見として片付けられていました。しかし今や、「今の環境であればそこまで進んでもおかしくない」と断言する人が日に日に多くなって、誰もが腹の中でその最悪のシナリオを織り込み始めています。

消えた防波堤と「トリプル安」のリスク

市場において「ありえない」という前提が消え去った時、相場を止める見えない防波堤(壁)は消失します。

全員がうすうす円安と金利上昇の継続を確信しているからこそ、何らかの事象(中東情勢の緊迫、インフレデータの高止まり、外資による日本売りなど)をきっかけにして、一度その方向へ相場が傾き出せば、坂道を転がり落ちるように「円売り・債券売り(金利上昇)」が加速します。

そして、その円安と金利上昇の連鎖は、高値を付けて妥当水準を模索する現在の株式市場にとっても強烈な下押し圧力となります。

  • 円安の加速: 日米の実質金利差や貿易赤字を背景に、為替介入で円高・ドル安になるなら押し目でドルを買いたいというニーズが強い。

  • 金利の上昇(債券安): インフレ懸念と国債の需給悪化により、10年債利回りは3%を目指して上昇基調を強める。3%を超えると次は4%とさらに金利先高観が強まる。

  • 株価の圧迫: 「高値を目指す展開までには相当な時間がかかる」と押し目買いの需要が引っ込んでしまうと、金利高止まりとエネルギーコスト増、海外勢の資金引き揚げが株式市場の重石となる。

非常に気になるのは、高市政権の肝である「骨太の政策」の効力を発揮するまでに時間がかかるにもかかわらず、金融市場が不安に思う「円安」「金利高」に対して政権の対応は鈍感であり、放置しているように見えることです。

何か一つのきっかけでこの3つが同時に走り出し、「株安・円安・債券安」が相互に悪影響を及ぼし合う「トリプル安」の波乱に見舞われる可能性は、以前にも増して極めて高まっています。

この8月に起こってもおかしくないと危機感を覚えているのは私だけではないと思います。