不動産会社スルガコーポ(東証2部上場)が昨日、民事再生法の適用を申請し受理されました。これにより負債総額620億円を抱え、25日付で上場廃止となります。同社が発行した公募普通社債は、2001年のマイカルの破綻以来、7年ぶりのデフォルトとなりました。
普通社債の銘柄は2本。
2009年10月29日償還 利率2.89% 発行総額110億円 発行当初の格付けBBB−(JCR)
2010年3月15日償還 利率2.95% 発行総額100億円 発行当初の格付けBBB−(JCR)
いずれも期間3年の社債発行です。
格付けBBB−(トリプルビーマイナス)はギリギリ「投資適格債」と言われる水準で、もう一ランク落ちた格付けBB(ダブルビー)以下は償還満期までに企業が破綻する可能性があるという「投資不適格債」、「ジャンク(かみくず)債」と呼ばれ、プロの投資家でも運用に慎重になる格付けで、その一歩手前で当初発行されていたものであり、元々リスクがない社債ではありませんでした。実際、プロの目利きであるはずの投資信託で、この社債を安全資産として組み込んでいるところもありました。
格付けBBB−で評価した格付け機関はJCR(日本格付け研究所)。今年5月29日に、当初の格付けBBB−を格付けBBの投資不適格債に格下げし、翌々日31日に格付けCCC(トリプルシー)に格下げ。ちなみに格付けCCCは「債務不履行に陥っているか、その懸念が強い」という格付けです。そして昨日、格付けCCCは格付けDの「債務不履行」となりました。
もう格付けがBBに引き下げられた29日の時点で、実質この社債の買い手はいなくなり、売るに売れない「不動産」になっています。
「格付けBBB−の社債は買うな、手を出すな」というつもりは毛頭ありません。その格付けだからこそ、高いリターンが約束されているのですから。?「償還満期を迎えることができるだろうか」、?「現在の格付けはまだ引き下げられる方向にあるのか、このままでしばらく推移するのか、もしかしたら格付けの引き上げが期待できるのか」、?「格付け、償還リスクに見合った利率なのか」を検討した上での前向きな投資であれば良いと思います。
今回のスルガの破綻は、業績悪からではなく、反社会的勢力と密接な関係を維持していたことの判明から生じた特殊なケースですが、この社債に関しては、やはり事件が発覚してすぐ(今年3月月初頃)に換金に動くのが妥当だったと思います。
これにより、比較的格付けの低い銘柄の発行は難しくなりそうです。一方で13日に発行されたシティグループのサムライ債(円建て外債)は30日の募集最終日を待たずに完売しました。
株式はこりごりと、少し確定金利ものに個人の関心が向かっています。
今回のスルガ社債の破綻と、格下げになる見通しが高いものの現在高格付けのシティグループサムライ債の販売好調を結びつけて考えてみました。株価が低迷する中、今後資金調達の手段として社債の発行を視野に入れるところが増えるでしょう。特に個人の資金を当てにした社債が増えてくると思います。しかし今回のスルガ社債の破綻により、ある程度魅力のある利率でなければ個人の歓心を誘うことが出来ません。そこで参考にせざるを得ないのはシティグループのサムライ債の期間3年、利率2.66%の条件です。「そこまでの金利水準を提示して社債を発行するべきか」と多くの企業が悩むでしょう。しかし、どこかの国内企業が発行に踏み切れば、今度はその利率を参考にするしかありません。こうして、個人投資家にとって魅力ある金利水準の社債が発行されるようになるかも知れないと私は期待しています。
スルガの社債デフォルトの知らせを聞き、「社債への投資は危ない」という一面だけではなく、「魅力的な金利水準の社債が発行されるかも知れない」という期待の目を持ってもよいのではないでしょうか?