売れているから心配な金融商品 ?

 羽田空港に行って初めて、旅先が決定する「びっくりツアー」が以前話題になりました。北海道でも、沖縄でも、名古屋でも、行き先として受け止められる旅行の準備、心の準備をして、羽田に向かうのでしょう。何を見たい、何を食べたい、何をしたいではなく、すべてを受け止め、ただ旅するサプライズを求めて参加するのでしょう。
 旅行業者は主旨とメリット、デメリットを説明し、旅行者は理解して参加するから、トラブルになったという話は聞きません。
 これと同じように、自分の意志ではなく、相手の都合で予定が決められる金融商品があります。投資で大事なのは「自分で決定すること」だと考えている私にとっては、何で存在するのか理解できない金融商品なのですが売れているから不思議です。
 例としては「償還延長特約付き定期預金」。定期預金よりも比較的高い金利で確定した3〜5年間があり、その後は銀行の都合であらかじめ契約した期間の範囲内で、当初よりも更に高い金利で1年ごと延長できるという、条件・特約がついた預金です。
 「当初5年間は年1.3%の確定金利、その後は最長5年間、銀行の判断により年1.8%で償還を延長できる」というもの。
 つまり当初5年間は年1.3%で確定だが、その後延長するかどうかは銀行次第。5年定期で終わるか、10年定期になってしまうかは投資家の関知するところではない。
おまけに途中解約した場合は、解約ペナルティーを課せられ大きく元本割れする可能性がある。10年間自分で自由になるお金ではなくなる。その代償が、比較的高めに設定された確定金利だということを理解しなければならない。
 当てに出来ないお金として拘束される10年間の代償として、その金利で満足できるのかを、銀行側は投資家が判断できるように情報提供を行い、投資家は納得して投資しなければならない。敢えて預金者ではなく、投資家としたのは、途中解約で大きく元本割れする可能性があるからだ。通常の定期預金の場合は、解約しても元本割れは生じない。
 「この確定金利で、その後延長される金利がこの条件であれば、10年間拘束される資金になっても十分見合うリターンである」と判断できる中・上級者の投資家に販売する金融商品であるはず。結果10年持ってしまった預金はあるが、最初から10年間拘束される定期預金を組む人がどれくらいいるのだろうか。将来、銀行と預金者の間でトラブルの種にならなければと思う。売れているから余計心配な商品のひとつである。