「明日からしばらくの間、日本の投資家がこの辺りの銘柄を1000億円ほど買う予定だよ」。この情報はインサイダーですね。しかし、実際、新規設定される投資信託は一般投資家に向けて、このように情報を触れ回っているのと同じです。しかも、国や地域が限定されたり、高配当利回りだ、高ROEだ、公共株だと限定すれば、買われるだろう銘柄は絞りやすくなります。したがって、このインサイダー情報を利用して、投資信託が募集が終わり、買い付ける前に先回りして買う人が大勢いると考えて良いでしょう。目端が利いた、手練手管の投資家が十分仕込んで売り場を探すときに、募集で集められた投資信託のお金は割高・割安にかかわらず、そのときの時価で投資をしなければなりません。結果毎回のことですが、大きな相場暴落の前に大量設定された投信の名前がその後長く悪い印象で語られることになります。
ある人から「新興国株式に投資する新規設定の投資信託があるのですが、どう思いますか?既存の投信はすでに基準価額が高くなって買うのに抵抗があるのです」と質問を受けました。投資に慣れた人でも、基準価額の高い投信への新規投資を避けて、新規設定の基準価額1万円を求める人が多くいます。
もし新規設定投信の投資対象が魅力だとと考えるなら、わざわざ、どの水準で買えることになるかどうか分からないものよりも、インサイダー情報を受けて、自分のタイミングで投資できる既存の投資信託の方が納得して投資できるのではないでしょうか。
私は新規設定の投資信託ばかりオファーする金融機関よりも、既存の投資信託の中から自分の目的にあったものを勧めてくれる金融機関の話に興味があります。何故なら既存の投資信託の場合、数ある投資信託からこれを選んだ理由が聞けるからです。「売れています。人気あります」のムードだけでは、既存の投資信託を買う気にならないからです。