本日の日経新聞記事では、新興国の株式に投資する投資信託の残高が昨年度に比べて49%増加し、4兆7000億円になったとありました。最近では、ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字から取ったBRICs(ブリックス)に加えて、VISTA(ビスタ)が注目されているとか。ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの頭文字だそうです。
ベトナム株式の株価は昨年度80%値上がりし、ついこの間までベトナム株式の時価総額は5000億円であると私は記憶していたのですが、2兆円に膨れていることを知って驚きました。こんなに短期間に、買いたい人が集中すれば相場が過熱し割高になっても不思議ではないなあと思います。ベトナムのPER(株価収益率)は、日本の2倍以上の45倍。成長性が期待されているのだから、一時的に割高な評価を受けるのは当たり前と考える人も多いでしょうが、みなさんはいかがですか?
私が注目するファンドの一つに、19996年に設定されたベアリング投信の「アジア製造業ファンド」という投資信託があります。97年香港返還を機会にアジア株式は大暴落し、このファンドの基準価額は7000円割れまで落ち込み、ITバブルで13000円程度まで上昇しましたが、バブルがはじけ1万円程度で低迷していた2000年に初めて私はこの投信を知りました。この投信は「製造業」にしか投資しません。新興国の株式で外人が買うのに適した、投資可能な流動性を備えた株式の多くは、財閥系の銀行などの金融機関か、不動産関連会社です。しかし、このファンドはあえて製造業だけに絞って投資します。当時アジアの製造業のPERは4から6倍ぐらいでした。とても成長力を期待された数字ではありませんでした。しかし、元々が4〜6倍ですから、8〜10倍にでもなれば大変なパフォーマンスです。先進主要国のPER20倍が倍になるにはバブルが必要ですが、当時のアジア製造業はバブルがなくても達成できると考えたのです。
どうして金融機関と不動産を組み入れていないのかというと、金融・不動産の業種は少なからず、欧米、日本など主要国の動向に強く影響を受けてしまうからです。純粋に製造業企業の成長性に賭けたいというこだわりがあると聞きました。
その「アジア製造業ファンド」の基準価額は、今では4万円程度になりました。
アジアのインフラ整備に世界が期待をかける環境に大きく変わりました。PERの投資モノサシで言えば、期待含みの高PERになってしまったアジア株、新興国株。見向きもされなかったアジア株の時期が懐かしい。この難しい投資環境の中で、このファンドがどんな足跡を残していくのか、興味があり、引き続き注目していきたいと思います。
ある不動産屋さんの話を思い出しました。彼はバブルの時を振り返って言っていました。「あの時は現地も見ずに、地図をファックスしただけで不動産を買ってくれたのになあ。なんて楽な商売をしていたんだろう」。今彼は再び忙しく飛び回っているのでしょう。そんな彼が今、何を感じているのか、聞いてみたくなりました。