円の巻き戻しを期待して、円高を仕掛けた短期筋が、刀折れ矢尽きて、泣きながら退散しているかのように、おとといの円全面高の環境が一変しました。当面は日本の利上げ懸念ぐらいしか円高期待のイベントも見えず、再び米ドルで125円を意識する水準まで円安が進行しなければ、円独歩安に対する強い懸念は広がらないと思います。従って高金利通貨を売って円を買っている人は現在も心中穏やかではないと思います。
短期的には大きな円高に振れる機会はなさそうですが、2,3年先を考えてみると、示唆深い行動が出ています。円建て外債の発行が急増しているのです。6月だけで海外の企業が円で調達した中長期の資金が8490億円、1−6月の上半期で12600億円。上半期としても2000年1−6月期の9080億円を上回り、1998年以降で最大となりました。これはどういう意図なのでしょうか。
日経記事には「日本の金利は上昇傾向にあるが欧米に比べ低金利で調達できることが背景で、円を外貨に替えて運用する円借り取引と同様の外為取引が生じ、円安の一因となる」と説明がありました。私はちょっと見方が違います。外人投資家は、将来の大きな円高への巻き戻しに警戒を持ち始め、円を借りて外貨に替える取引をしている円資金の一部をいつでも返せるように、円安である今のうちに中長期で押さえておこうする動きでないかと思っています。従って円を借りて外貨には替えませんから、これは円高要因だと思います。
しかし毎日やりとりされる為替市場の大きさから見れば、円建て外債の発行額はまだまだ微々たるものであり、すぐに円高に結びつくわけではありません。しかしながら、外人投資家が円で中長期の資金を調達し始めたというのは大きな変化だと思います。高くなった自国通貨と安くなった円を交換して、割安になった日本の優良資産を狙う。私が外人であれば、チャンスがきたと考えます。