今月の視点 2024年9月

20年安心して保有できる、だから選ぶ米国国債

●金利低下で米国国債の妙味は?

パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、8月23日のジャクソンホール会議の講演で、「政策を調整すべき時が来た」と述べ、2022年7月に5.25%~5.5%に引き上げた政策金利を、次回9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げすると示唆しました。
これにより米国債利回りは、2023年10月につけた米10年国債利回り5%をピークに、今後、低下していく流れが固まったと思われます。

私はこれまで、「円資産だけで大丈夫なのか」と心配する方には、歴史的な高金利水準になった米国国債でドル資産を確保するチャンスだと、投資を強く勧めてきました。
最近は、「こんなに米国債利回りが低下してきて投資妙味はまだありますか」と質問されることが増えています。米10年国債利回りが一時3.7%台まで低下してきたからです。

まず前提として、米国国債への投資は、米国にお金を貸すことと同じなので、米国は破綻するかもと心配する方には勧められません。また、米国国債というドル建ての資産に投資するので、為替リスクがあります。したがって、今、米国国債に投資したら、将来、円高に振れることがあっても元本割れを心配しないですむ資産になるという確信も必要です。

この前提を踏まえて、米国国債への投資に関心を持つ方には、あえて期間20年程度の米国国債をお勧めしています。期間10年の米国債利回りは4%を割り込む水準まで低下してきましたが、期間20年はいまだに4%台をキープしていて割安だと考えるからです。
債券の条件は、満期を迎えるまで変わりません。つまり、条件が良い時は、できるだけ長い期間の債券を選ぶのが妥当です。
ただし、常に元本が守られる預金と違い、債券の価値は発行体が破綻すると紙くずになってしまいます。20年以上の長期にわたって、安心して保有できる先であるかにこだわった結果、私は20年米国国債への投資を勧めています。

●米国国債への投資は金利と為替のバランスで考える

債券には定期的に利子を受け取る利付債と、利子がない割引債があります。米国国債の割引債はゼロクーポン債、ストリップス債(元本利子分離債)とも呼ばれています。
2045年2月15日償還の割引国債を例に見てみましょう。利回りは4.12%の複利です。購入単価43.34ドルに対して、計算上、毎年1.0412倍ずつ増えていくので、償還時には100ドルの現金になります(2024年8月30日現在)。
米国が破綻しなければ、償還まで保有することで、元本43.34ドルは2.30倍の100ドルに増えることが約束された、確定利回り商品です。もちろんドル建てなので、円高で損をする為替リスクはあります。ただし、元本が2.30倍になるので、1ドル147円で投資しても、元本を確保できる満期時の為替レートは63.91円(=147円÷2.30倍)となります。

多くの方は、160円台からここまで円高に振れてきたので、もっと円高になってから米国国債に投資したほうがよいとここでの投資に躊躇しがちです。
しかし、例えば、1ドル=120円の円高になったとしても、その時の20年割引国債の利回りが3%まで低下していると、満期時に投資元本を確保できる為替レートは66.44円となり、上記の現在の条件のほうが有利になります。このように外貨資産を持つタイミングは、金利と為替のバランスで考えるべきです。

この割引国債に投資したら償還時までただ放って置くだけで、1ドル=63.91円のコストのドル現金が手に入ります。為替リスクの心配がほとんどいらない資産になるわけです。
割引国債が償還する際には、ドル建ての償還金をその時の為替で円換算した金額と、円で投資した元本との差益に対して20%の税金がかかります。したがって、この割引国債に投資した多くの方は、当初、為替リスクに不安を感じるでしょうが、途中からは1ドル63.91円のコストのドル資産から、どのくらいの税金が取られるのかを気にするようになるでしょう。
20年後の老後資産の足しにと考えるNISA世代のニーズにも応えられる投資対象だと思います。