今月の視点 2025年5月

米国国債は個人にとって魅力的な投資対象

●米国からの資金流出に危機感

トランプ政権が掲げた「アメリカ第一主義」の政策は、関税引き上げを中心に展開され、米国製造業の復活と国際競争力の強化を目指しています。しかし、この政策は市場に大きな混乱をもたらし、株価、金利、為替の不安定な動きを引き起こしました。特に、トランプ大統領の不規則な発言や政策変更が市場心理に影響を与え、投資家の不安を増幅させています。

4月5日、米国はすべての国からの輸入品に対して一律10%の追加関税を課し、さらに4月9日には相互関税の上乗せを発動しました。この結果、株価の下落に加え、米国国債が売られて利回りが急上昇、ドル指数も低下するなど、「米国からの資金流出」が懸念される事態が発生しました。

ドル指数は、米ドルが主要通貨(ユーロ、円など)に対してどれだけの価値を持つかを示すもので、米国経済の信認を反映する指標のひとつです。このドル指数が3年ぶりに100を割り込み、米ドルの弱体化と通貨としての信認の揺らぎが懸念されています。

トランプ政権は、関税引き上げ政策による株価の一時的な下落は想定していたかもしれません。しかし、米国への不信感から米国国債利回りが急上昇し、資金が国外に流出していく市場の反応は、予想外だったと考えられます。結果として、トランプ大統領は、市場の動揺を抑えるため、発動したばかりの相互関税の上乗せを90日間延期する決定を余儀なくされました。

このような市場に安定を取り戻し、資金流出を防ぐためには、トランプ政権や米連邦準備制度理事会(FRB)が、市場に対して明確なコミュニケーションを取り、政策の方向性を示す必要があります。

●FRBが金利上昇をけん制する動きを期待

以上のことから私は、政策金利の引き下げに慎重な姿勢を見せているFRBには、「これ以上の米国国債利回りの上昇は容認できない」との、金利上昇をけん制するメッセージを期待しています。
特に10年以上の長期国債は価格変動リスクが大きいため、投資家は投資に慎重になっています。

もしFRBが長期国債の買い入れ額を増やすなどの措置を講じれば、長期国債利回りがすぐに大きく低下することはないかもしれませんが、安全資産としての米国国債への需要が増加し、利回りが低下する可能性はあります。これにより、ドル建て資産への信頼が回復し、ドル指数の持ち直しにもつながるでしょう。

最近の米国国債利回りの急上昇を受け、専門家からは米国国債のリスクの大きさを指摘する声も上がっています。特に、すでに大きな評価損を抱え、資金繰りを懸念する機関投資家が米国国債への新規投資を躊躇するのは理解できます。

しかし、債券は償還まで発行体がデフォルトしなければ、途中で評価損を抱えたとしても、決まった利金が受け取れ、償還日には額面金額が戻ってきます。じっと償還日まで保有すればいいと考える個人投資家にとって重要なのは、米国が償還日まで破綻しない国であるかどうかです。

現在、1ドル160円だった時期から140円前半に移行し、依然として高利回り水準にある米国国債は、投資対象として魅力的です。FRBが金利上昇をけん制する積極的な動きがあれば、安全資産であり高利回り債券でもある米国国債の価値が、再認識されることでしょう。