「お金のことで周りに相談できる人がいない」と困っている人がたくさんいます。本日の日経記事で「銀行のリテール力調査」の結果が出ていました。
私が悩む投資家の話を聞いていて、「今後の相場環境について、どう考える」とか、「具体的な金融商品の提案」だとかを期待して来られる方が多いのですが、私は「その前に考えておくべき大事なことがある」と感じています。
「具体的な金融商品選び」や、「リスクの丁寧な説明」よりもまず先に、目の前にいる相談者が「何故、投資に取り組むのが必要だと思ったのか?」、「その人にとって本当に投資が必要なことなのか?」、「必要であるなら、どんな投資の方法が適当なのか?」を一緒に考えることだと思います。
その結果の「金融商品選び」であり、「リスクの説明」が必要になるのだと思います。
金融機関の窓口では、まず「顧客の投資目的を明確にする」お手伝いができているかどうか、リテール力の大きな評価ポイントではないでしょうか?
どんなに実績の優れた金融商品を案内し、そして投資してもらったにしても、必ず投資家はその後に値動きに悩むことになります。投資する前よりも投資した後のフォローの方が販売した金融機関の役割としては大きく、その後に悩まないように、「なぜ選んだ金融商品が投資目的にあったものであるか」という納得に時間をかけて金融商品を提案すべきだと思います。
「リスクの説明」、「金融商品の手数料」、「金融商品の仕組み」・・・。顧客の投資目的が明確でない前に、実際自分が投資するかどうかも決まっていない段階で、そんな話を聞かされても、顧客にとっては退屈な話になってしまいます。
そもそも、投資するのは顧客本人なのですから、リスクの説明は金融機関から説明を聞かされるのではなく、顧客本人が自ら聞くものであるはずです。
しかし顧客は「何を聞いてたらよいかがわからない」状態であり、「このリスクについて説明してください」と説明を自ら求められる人がほとんどいない現状が問題です。
したがって、金融機関の窓口は「リスクの説明」、「金融商品の手数料」、「金融商品の仕組み」を行う以前に、顧客が「分からないところが分からない」状態から「分からないことがわかってきて、自ら質問ができる」ようにサポートすることが、大事な窓口の役目ではないでしょうか?
こうした対応ができている金融機関を投資家に紹介するという趣旨であれば、今回のような調査は意味があると思います。投資家の不安・不満は「周りに相談できる人がいない」ということ。これを受け止めて、前向きに対応している金融機関を評価して、もっと紹介していくことをメディアに期待したいです。