消費者保護を強化するために改正された建築基準法、投資家保護を強化するために施行された金融商品取引法であるはずなのに、手続きが煩雑、複雑になって、業者は販売・契約に必要以上にビビッてしまい、マンションは建たず、売れず、投資信託は「投資家から求められたら売る」という状況が続いています。販売は激減、業者の成績は大幅ダウン。
準備不足で現状、現場に合わない法制度を無理矢理押し付けた結果、業者にも消費者・投資家にも評判の悪い法律になってしまい、コンプライアンス不況という言葉まで生み出しました。
金融商品取引法は、業者に対して、?投資家の投資目的にあったものを提供しなさい、?投資家に無理強いする行為をしてはいけません、?ただ説明するだけではなく、投資家が理解できるまで説明しなければ意味がありません、ということを決めた、画期的な法律です。
つまり投資家の投資目的が明確であれば、自分の意に沿わない金融商品を売り付けられることはありません。無理強いされないわけですから、安心して金融機関を訪ねて説明を受けることができます。更にじっくり説明することが金融機関の義務になったわけです。わからないことがあれば、納得いくまで聞くことに気兼ねがなくなったわけです。そんな画期的な、投資家本意の法律ができたことを、何人の投資家が知らされているのでしょうか?
金融商品取引法は昨年の10月1日から施行されているわけですが、私の見るところでは投資家で金融商品取引法が投資家保護が強化された法律であることを実感できている人はほとんどいないと思います。何故か?
金融庁は施行前に「金融商品取引法で今後どう変わるか。どう変えなければならないのか」の説明を業者である金融機関向けには行いましたが、「投資家保護を強化した点」、「投資家にどんなふうにこの法律を利用してもらいたいのか」のメッセージを届かせる努力をしたのでしょうか?
投資家が賢く利用できるようになれば自然、金融機関もそれに合わせて変わらざるを得ません。
せっかくの投資家保護の法律を、一番大事な利用者に説明が十分に行われていない現状はまさに、「仏を作って魂入れず」。世間の非難を避けるため取り敢えず作った法律という感は否めません。
私はこの金融商品取引法は投資家にとって画期的な法律だと思います。投資目的さえ明確であれば、恐いものはありません。「自分は何で投資をしたいと考えたのだろう?」と原点に戻って、投資とのつきあい方を考えてみてください。その投資目的を明確にするお手伝いをするのが、金融機関の窓口であったり、ファイナンシャルプランナーだったりするのですが・・。残念ながらコマーシャル通り、「お金の相談をできる人が回りにいない」という人の方が多いですね。
金融庁にはそんな人が身近になるようなインフラ整備をしていただけたらと願います。
現在の相場の混迷はサブプライム問題など外部要因もありますが、投資家が「投資とどう付き合ったらよいか」の迷い・戸惑いの内部要因も大きいと思います。その迷い・戸惑いから解放する道筋で、この金融商品取引法が正しく運用されれば大きな力になると思います。せっかく、作ったんだから活かしましょう。