昨日、第一商品という会社のセミナーで、外国為替証拠金取引(FX取引)について、講師として話をさせていただきました。60人ぐらいの方が参加され熱心に耳を傾けていただきました。特に私はこの機会を通じて、FX取引のリターンとリスクのイメージを持っていただき、強制終了されることなく、長く外貨投資を続けていくためのつきあい方とメリットについて、参加者の皆さんに伝わればという目的で話しました。伝わったでしょうか?
第一商品のセミナー講師は初めてでした。事前に「第一商品がFX取引にどう取り組んでいるのか」をチェックしましたが、ある意味びっくりです。他のFX業者と比較すると、すぐにわかるぐらい、投資家にとってコストが高い業者でした。「こんなやり方で、FX取引の業者として生き残っていけるのかなあ」というのが感想でした。
セミナー前に、第一商品からの要請は「うちは投資家に余裕のあるFX取引をしてもらいたいと考えています。値上がり利益をバタバタ狙うやり方は勧めていません。余裕がある証拠金でゆったりと取引を継続して欲しいんです。その趣旨にあった話をしてください。それ以外は注文はありません。自由に思ったことを話していただいて結構です」ということだけでした。
加えて会話の中で「私たちはそのようなFX取引をめざしているのですが、自分たちが投資家に訴えかける以上に外部の方にお話しいただいた方がより効果的に伝わると考えています。そして結果、投資家から私たちにお問い合わせがあれば幸いだと思っています。私たちはインターネット取引だけではなく、対面での窓口対応も重要と考えています」ということを聞きました。
私のブログを読んでいただいている方ならお気づきでしょうが、私はこのことを聞いて非常にうれしく思いました。
昨年来、投資家、預貯金者はみんな悩んでいるのです。そして、その悩んでいるときに、販売した金融機関は自分の保身だけを考えていて、何の役にも立たない、あてにできない存在だと、既存金融機関を切り捨てようとしています。ひどいところは、自分が切り捨てられかけているのに、それにも気づいていません。金融機関の鈍感さにはびっくりさせられます。
自分たちで投資家のフォローができなければ、第三者の力を借りるのもひとつの手です。しかし、その第三者は、投資家の代弁者、投資家側の立場に立つ人間で、投資家の悩みを受け止めた上でコミュニケーションを取れることが前提です。投資家は自信を失い、被害者になっているわけですから、その第三者の役割が、主催者側の言い訳を擁護したり、主催者側の売りたい商品を売りつける手助けであるなら、投資家の信頼は更に失うことになります。
金融機関は今こそ、目先の値動きに振り回されている投資家や投資の継続をあきらめかけている投資家に対して、「今後どうするか」を自分で判断・確認する機会を積極的に作るべきだと思います。「今買うならこれ」とか根拠もなく勧めたり、逆に「目先相場は終わってしまった。打つ手なし」と販売側が元気をなくしたり。そんな金融機関は投資家の何の助けにもなりません。「今を受け止めて、今後どんな対応が考えられるのか。そして自分はどんな準備をしていくのか」を、一緒に考える機会を作ることの方が大事だと思います。
そういう意味で、今回の第一商品のような、「悩みを持つ投資家さんが参加していただき、何かヒントをつかんで帰って行っていただければ」というセミナーは他も見習うべきだと思います。
私の提携先「生活設計塾クルー」では、毎月2回、東京中野区の中野サンプラザで、定期的なセミナーを、2002年8月から6年間続けています。これまで、「損保ジャパンDIY生命」、「オリックス生命」、「富士火災海上保険」、「全国生協連」がこのセミナーの協力会社としてサポートしていただきました。協力会社に共通するのは、「協力会社の宣伝をしない」、そして「協力会社は内容について注文をつけない」ということです。それでも、このセミナーを応援してくれているのは「消費者が何を大事にすべきか賢く判断してくれるようになれば、自分たちの会社を選んでもらえる」という自信があるからです。
金融機関が「投資家は自分たちよりも賢くなったら商売がしにくくなる」と考える時代は終わり、「賢くなった投資家に、自分たちの商品を選んでもらうように品質で勝負する」時代に入りました。
「どうしたら投資家が賢い選択をして、しかも投資家が自分たちに声をかけてもらえるようになれるのか」、販売金融機関側の工夫が重要になると思います。
投資家は今こそ、前向きに自分にあった投資スタイルについて考える時です。