大幅に金利上昇した日本国債に投資を検討するべき理由
――市場構造の変化と政策的サポートの可能性――**
日本の金利環境は、長期にわたる超低金利から大きく転換し、現在の超長期国債の利回りは30年債で3%台後半、40年債では4%台に乗せる局面が見られるようになった。これは1990年代以来の高水準であり、国債市場にとっては“異常値”とも言える利回りである。金利上昇は財政悪化懸念や日銀の政策転換を背景にしたものだが、実際には市場構造の歪みが利回りを押し上げている側面が強い。
本来、超長期国債の最大の買い手は生命保険会社や年金基金である。彼らは長期の負債を抱えており、デュレーションを合わせるために超長期債を必要とする。しかし現在、これらの投資主体は金利上昇局面で抱えた巨額の含み損により、新規の超長期国債投資に慎重にならざるを得ない状況にある。さらに、2026年に導入される新たな監督基準では、超長期債のリスクウェイトが上昇し、保有コストが増すため、長期債への投資は一段と抑制される見通しだ。
一方、日銀は従来のような大規模買い入れで金利を抑え込むことができない。インフレ率が目標を上回る中で、国債買い入れを拡大すれば金融政策の整合性が失われるためだ。結果として、国債市場は「本来の買い手が不在」という異常な状態に陥り、需給の歪みが利回りを押し上げている。
しかし、投資家の視点から見れば、こうした“買いたくても買えない投資家が多い”ために利回りが過度に上昇している局面は、むしろ長期投資の好機と捉えることができる。特に為替リスクもないのに40年債の4%という利回りは、歴史的に見ても魅力的な水準であり、長期安定収益を求める投資家にとっては注目すべきタイミングである。金利がピークアウトすれば、債券価格は上昇し、キャピタルゲインも期待できる。
こうした市場環境の中で、政策面から国債市場を安定させる可能性として浮上しているのが、政府が未活用の基金を集約し、長期安定運用を目的とした「ジャパンファンド(仮称)」を創設する構想である。これは中道改革連合が提案しているもので、国の遊休資産や各種基金の余剰金を一体的に運用し、その運用益を財源に充てるというものらしい。具体的には、食料品の消費税を恒久的にゼロにするための財源として、ファンドの運用益を活用するという政策案が示されている。このファンドの運用を高金利水準にある債券で運用すれば、デフォルトしなければ確実な利金収入が見込めるので、運用益がぶれてしまう株式運用よりも財源として好ましい。
この構想の是非は別として、金融市場の視点から見ると、政府系ファンドが超長期国債を安定的に買い支える存在として登場することになれば、国債利回りの上昇に“ピーク感”を与える効果がある。現在の国債市場は、需給の歪みによって利回りが押し上げられている側面が強く、長期投資主体の新規参入は市場安定化に寄与する。特に、生保・年金が含み損で動けず、日銀も買い入れ余地が限られる中で、政府ファンドが長期国債の“新たな買い手”として登場することは、市場の信認回復につながる可能性が高い。
さらに、国債市場の安定化に向けたもう一つの有効なアプローチとして、NISAの対象に債券への直接投資を認めることが挙げられる。現在、NISAでは債券への直接投資は認められていない。しかし、いまのように40年債が4%、20年債でも3%台という環境は、個人にとって“歴史的なチャンス”である。安全資産で確実に高いリターンが期待できる投資対象を求める個人にとって、債券への直接投資は魅力的な選択肢となる。
NISAで債券を直接購入できるようになれば、個人が新たな安定買い手として市場に参加することになり、国債市場の需給改善に寄与する。個人投資家の需要は分散的で継続性があり、長期的な底堅い需要を形成するため、金利上昇に歯止めをかける効果が期待できる。ジャパンファンドという“政府系の安定買い手”と、NISA債券解禁による“個人の新規買い手”が揃えば、国債市場の安定化は一過性ではなく、構造的なものとなる。
総じて、現在の日本の金利環境は、市場の歪みによる“過度な利回り上昇”、長期投資主体の不在、財政懸念の増幅という複合要因が絡み合っているが、逆に言えば、長期投資家にとっては久しぶりに国債が投資対象として輝きを取り戻す局面でもある。金利環境は永続するものではなく、いずれピークアウトする。その前に、国債市場の構造的な歪みを理解し、長期的な視点で投資機会を捉えることが重要である。

