〜試される片山大臣、財務省の覚悟〜

〜試される片山大臣、財務省の覚悟〜

今週、片山さつき財務相が極めて異例の発言(口先介入)を行い、市場関係者の間で大きな注目を集めています。

世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に対し、「現在の国債利回りは投資妙味が高く、国内債券への運用回帰を促したい」と訴え、さらに個人に向けても「NISAでの個人向け国債の組み入れや、相続税優遇などメリット向上策を検討する」と言及したことです。

「マーケットへの恣意的な政治介入ではないか」と専門家の間でも評価が真っ二つに分かれているこの発言。

私は、この片山大臣の発言を高く評価すべきと考えています。なぜなら、20年・30年といった超長期の日本国債の利回りはすでに4%程度に達し、日本の過去の水準や他国との金利水準と比較しても、個人・機関投資家の双方にとって「非常に魅力的な利回り」になっているからです。

実際。個人向け国債の販売額は急増し、長期運用を担う生命保険会社などからも「投資を本格検討すべき水準だ」という声が聞こえてきます。

では、なぜこれほど魅力的な利回りにもかかわらず、機関投資家は本格的な投資に躊躇しているのでしょうか?

 

機関投資家が「買いたいのに買えない」3つの躊躇

 

  1. 金利上昇の終わりが見えない  金利がさらに上昇すれば、債券価格の下落によって巨額の評価損が発生します。政府・日銀が「どこまで利上げを容認するのか。どの水準で金利を安定させたいか」が見えず、投資判断が難しい。
  2. 会計上の「時価評価損」の壁 満期保有目的であれば簿価評価での保有は可能ですが、その認定要件が厳格すぎるため、要件緩和を求める声があります。
  3. 実質金利マイナスの放置 実質金利が大幅なマイナスのまま、為替(162円台)やインフレを放置しているように見える政策姿勢が、市場に「円安進行・インフレ高進」を予感させ、長期国債利回り上昇(価値の下落)懸念が消えません。

 

今回の片山大臣の発言を、単なる「円安・国債利回り上昇対策のアピール」で終わらせてしまえば、これまでの「断固たる措置で臨む」という為替への口先介入と同様、マーケットから相手にされなくなるでしょう。

不適切な介入との批判を受けながらも、あえて大上段から発言した以上、片山大臣はその言葉に「責任」を持ち、躊躇を取り除くための「具体的行動」を即座に示す必要があります。

私たちが財務省、そして政府に求めるべきは以下の3つの緩和策と決断です。

  • 「満期保有目的(簿価評価)」の適用要件の大幅な緩和
  • 個人向け国債の「実質的なメリット向上」の断行
  • NISA制度における「国内債券直接投資」の解禁

これらを続けざまに発信し、実行することで初めて、財務省は、国債市場の「真の番人」としての役割を果たすことができます。逆に、具体的な行動を欠いたままであれば、財務省は市場から「無責任な発言をしただけ」と烙印を押され、発言力はさらに低下するでしょう。

今回の片山大臣の発言は単なる市場向けのメッセージではなく、国債市場の信認を大きく左右する重い意味を持っています。「言っただけ」で終わらせず、財務省が覚悟を示すことを強く期待します。