「新規上場株は儲かる」、「公募株がもらえれば宝くじに当たったのと一緒」と、IPO(新規株式公開)銘柄には根強い人気があります。上場当初の株価が公募価格の倍以上になる大もうけ株もあり目立つことが多いのですが、一方株価が盛り上がったのは上場時の数日だけで、その後の株価は低迷、出来高は急減し売るに売れず、いつの間にか公募価格を割り込んで、ついには上場時高値の2〜3割まで株価が急落して、大きな損を抱えて身動きの取れない投資家も多いようです。
その背景には、新規上場時に公表された業績予想が、上場後間もなしに大幅な下方修正の発表がされるなど、投資家の不信感を招く事態が相次いでいるからです。上場時の業績予想数字は、幹事証券会社のチェックと取引所の審査を経たものであるにもかかわらずです。プロでさえ見逃すものを、個人投資家に「注意しろ。自己責任だ」と言われても、あきれるばかりです。これは投資判断の根底を裏切る詐欺に近い行為だと考えます。実績の少ない企業の決算なのですから、上場時の予想は控えめにして、その後上方修正されるぐらいの配慮が関係者には必要ではないでしょうか。
プロの投資家には「上場後短期間の下方修正には罰則規定を設けるべき」という意見もありましたが、その通りだと思います。企業、チェックする証券会社、審査する取引所、それぞれの責任が問われるべきです。新興株の不人気・不信は、「成長企業予備軍」と「実態がわからず現段階では評価が難しい企業群」をしっかり区別しているのかを疑ってしまう状態を市場関係者が長らく放置してきた結果ではないでしょうか。「我々も予想できなかったんです」と言われたら、投資家は何を頼りにしたらよいのでしょうか。投資家の自己責任を問う以前に、そんな会社の上場を許した関係者の責任を問わないのは片手落ちだと考えます。