今月の視点 2021年11月

久々に外債投資を検討できる水準になった

 

米国では月を追うごとにインフレ懸念が高まっています。米連邦準備制度理事会(FRB)は、「インフレは一時的」との姿勢を崩してはいないものの、マーケットでは供給網(サプライチェーン)の混乱が続く中でエネルギー価格が高騰し、インフレの長期化を懸念する見方が増えているからです。

新興国ではドル高・自国通貨安の進行でインフレ圧力が高まっています。ブラジル中央銀行は10月、6会合連続で政策金利を引き上げて7.75%にしました。最近では、新興国だけではなく、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど先進国でも政策金利の引き上げが検討されるようになりました。

インフレが一段と深刻になれば急激な金融引き締めを招きかねないとマーケットでは警戒を強めていますが、大幅な金利上昇はあり得るのでしょうか。米国の国債利回りの水準を参考にして今後の金利動向を予測してみましょう。

  • さらに大幅な金利上昇はない

今後金利が上昇していくことを前提とした場合は、お金を借りるならできるだけ長い期間で借りようとするので、借入期間が長くなるほど金利は高くなっていきます。
逆に金利が低下していくことを前提とした場合は、短期間で借りて金利が低くなるのを待つので、借入期間が短い金利のほうが長いものよりも高くなります。

期間別米国国債利回りの状況を見ると、直近1年間では景気回復期待とインフレ懸念を背景に、期間2年、5年、10年がそれぞれ035%、0.8%、0.8%上昇し、0.5%、1.2%、1.6%の水準まで上昇してきました。長い期間ほど金利が高くなっており、ここだけを見ると、米国金利は今後も上昇していく動きだと言えます。

ただし最近になって、期間30年の利回りは1.939%と、期間20年の1.983%よりわずかに低く、ほぼ横並びになりました。期間が異なる金利が並ぶのは、この先金利が上昇するのかそれとも低下するのかの予測が難しい時に起こることが多い現象です。

この1年は景気回復期待を背景に金利が上昇してきましたが、最近では、物価の持続的な上昇と経済活動の停滞が同時進行する(スタグフレーション)可能性が出てきたことで、景気回復期待を背景にした金利上昇に限界が見えてきた兆候かもしれません。

これらの動きから、私は、米国金利は20年国債利回りの水準までの上昇はあり得るかもしれませんが、景気回復の腰を折らない配慮から、今後さらに金利が大幅に上昇する可能性は低いと想定しています。

  • 金利高く、円高通貨安がチャンス

この先、大幅な金利上昇がないことを前提にすると、最近の上昇で妙味が出てきた外貨建債券投資に注目していただきたいと思います。外貨建債券は発行体が破綻することなく償還を迎えると、確実に元本と利息が手に入るため、円換算で元本割れにならない為替水準を引き下げることができる確定利回り金融商品です。

例えば、米10年国債を複利利回り1.6%で償還まで保有すると元利合計額は約1.17倍(=1.016の10乗)となり、現在の1ドル=114円で買い付けた場合、10年後97.44円(=114円÷1.17倍)の円高になっても円換算で元本割れになりません(税金は考慮せず)。

ブラジル国債の場合はどうでしょうか。「ブラジルって高インフレで政治的に不安定な国だけど大丈夫?」と多くの方が考えるでしょう。そういう背景があるからこそ、現在、10年国債利回りは12%の高金利、1レアル=20円という通貨安の水準にあります。12%複利利回りの場合、10年後の元利合計額は元本の約3.1倍になります。

2013年10月頃の10年国債利回りは現在と同じ12%で1レアル=45円水準。このときの円換算で元本を確保できる為替は14.52円(=45円÷3.1倍)でしたが、現在は20円なので6.46円になります。このように通貨安のときほど外貨建債券投資の効率は上がります。

金利水準が高い場合には、発行体の信用リスクが大きかったり、高インフレだったりと、高いなりの理由がありますが、そのリスクに見合った水準まで金利が高く、通貨安になっていると判断できるのであれば、投資を検討する価値があります。外貨建債券投資は、久々に投資を検討できる水準まで戻ってきました。