今月の視点 2023年2月

外国債券投資は金利と為替のバランスで考える

●中央銀行が政策金利の引き上げを休止する

2022年の金融市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)など世界各国の中央銀行がインフレを抑制するため、それまでほぼゼロで据え置いた政策金利を積極的に引き上げた結果、1977年から45年間で初めて、株価と債券価値双方ともに値下がりした年になりました。

昨年10月には米国10年国債利回りが4.27%まで、破綻リスクが低い投資適格社債でも5%台、低格付社債では10%超の水準にまで利回りが上昇しました。

そして、サプライチェーンの崩壊やロシアのウクライナ侵攻をきっかけに供給不足を起因にした物価上昇に対して各国中央銀行が対応に追われた年でもありました。資源価格の高騰に大幅な円安進行のダブルパンチを受けて、円以外に米ドルなど外貨資産を保有する通貨分散の必要性を感じた方も多かったと思います。

1月25日、カナダ銀行(中央銀行)は政策金利を0.25%引き上げて4.5%にしました。利上げは8会合連続引き上げで引き上げ幅は前回の0.5%から縮小し、「今は一旦立ち止まって金融政策が十分に引き締め的かどうかを評価すべきだ」と米欧の主要中央銀行でいち早く利上げの一時停止を明言しました。

FRBもカナダ銀行と同様に、夏頃までには利上げを休止して、これまで政策金利を引き上げてきた効果を確認する時期に入っていくとマーケットでは見ています。
ただし、米欧中央銀行は当初、インフレは「一時的」と見誤って大幅な政策金利の引き上げを余儀なくされた失敗の反省から、インフレの抑制が確実に効いている確証を得るまでは金融緩和への転換には慎重であるはず、利下げは早くとも年後半だろうという見方もあります。

●高金利が為替リスクを和らげる

債券利回りは景気の体温と言われています。償還期限が長いものほど将来の景気を先読みして動き、先の景気が良くなると見れば、低い金利のうちに資金を早く調達しようと先を急ぐ動きに押される形で金利は上昇基調になり、逆に景気が悪くなると見れば、資金調達のニーズが落ちると先読みして、資金調達はできるかぎり短期で資金繰りを行い、長期金利が下がるのを待つ動きが増えます。現在は後者で、景気後退懸念から長期金利が下げやすく、当面の政策金利上昇を背景に短期金利は逆に上がりやすい環境にあると言えるでしょう。

米国10年国債利回りは一時よりも金利低下したとはいえ、3%台は過去と比較して高い水準にあります。3%複利利回りとは、毎年3%ずつ元利金が増えていき、10年後の償還時には約1.34倍(=1×1.03×・・×1.03)になる利回りです。長らくゼロ金利状態で魅力を失っていた債券投資に妙味が戻ってきたのです。

ただし米国債券はドル建てなので、日本人は円高になり元利金が目減りする為替リスクも考慮する必要があります。たとえば、1月30日現在の条件で計算すると、1ドル=130円の時に3.5%複利利回りで米国10年国債に投資した場合、10年後の元利金総額は1.41倍に増えているので、130円を1.41倍で割った92円20銭(=130円÷1.41倍)が円で投資した元本を確保できる為替レートになります。つまり、償還を迎えるまでじっと米国債を保有することで当初1ドル130円だった為替コストが92円20銭を超える円高にならなければ損をしないドル資産を持てるなら投資する意味があると考える方なら有効です(税金は考慮せず計算)。

現在の元本確保レートの水準は過去と比較して悪い条件ではありません。昨年10月の米国10年国債利回りは4.27%と現在よりも高い利回り水準でしたが、このときのドルは150円でした。元本確保レートを計算すると、元利金総額は1.52倍になりますが、このときの為替は150円だったので98.68銭(=150円÷1.52倍)となり、現在のほうが有利になります。

つまり外国債券投資で重要なのは、「金利が高いから」だけではなく、為替水準とのバランスで考える必要があります。「円だけでは不安」で確かなドル資産を保有したいと考える方であれば、「1ドル=100円になったら」と待つよりも、利回りが上昇して魅力的になったドル建て債券投資のチャンスを活かしてドル資産を保有する検討をしてもよいと思います。