昨日東京市場で米ドル為替は1ドル=106円半ばで推移していましたが、海外市場では106円を割り込みました。東京市場にこの水準で戻ってきたら、外貨を押さえるチャンスだと思っていました。しかし、結局はその後108円台手前まで円安が進行するドル独歩高に転じて戻ってきました。
米国10年国債利回りの異常な低金利。最近目立つ英ポンド安。1ドル=2.1160ポンドが1.9386までドル高英ポンド安、1ポンド=251円が205円割れまで円高ポンド安がありました。オイルマネーなど溢れた投資マネーがロンドンを経由して世界に散ったと言われていました。この現象をどう見たらよいのでしょうか?
円を借りて外貨で投資する「円キャリー取引」の絶対量がサブプライム問題を発端にする信用収縮でロンドンマネーから東京マネーに戻り、ロンドンから世界に散ったマネーが再びロンドンにドル資金として戻り、一時米国国債で身を隠している動きがあるのではないでしょうか。この資金の流れがドル高ポンド安の一因になっているのではないでしょうか。これはまったく的外れな憶測なのかもしれません。しかし、明らかに安全資産として「何で資産を確保したら良いのか」という迷いが世界全体に急速に広がっていると思います。
昨日、英中央銀行は政策金利を0.25%引き下げました。しかし、欧州中央銀行は据え置きました。欧州中央銀行が政策金利を据え置いたことに対して、「対応が遅い、鈍感だ」という非難する声は出ていませんが、私は今回英中央銀行と同様に欧州中央銀行は政策金利を引き下げるタイミングだったと思います。
第1に、欧州金融機関、機関投資家のもとには世界のうねった投資マネーが一気に流れ込みました。かなり資金を持て余した運用実態があったと想像されます。私は米国同様にユーロでも、そのツケを払わなければならないところがまだ隠れていると疑っています。したがって、欧州中央銀行は米国で起こっている問題を自国内の問題として協調姿勢を示し市場に安心感を与えることに、もっと留意すべきだったと思います。
そして第2に、米国はすでに短期間に大幅な金利引き下げを行った結果、政策金利は3%です。昨年の専門家の見方では「春先までに3.5%まであるか」というものでしたが、それを超えて、あと0.5%から1%の幅しか、景気刺激策として期待できる余地がなくなりました。米国大統領選の最中で、大胆な経済対策を米国に期待できるでしょうか?少ない手の内で、有効に市場を安定させるには、短期間にテキパキとした政策の発信、本気度を伝える必要があったと考えます。そのためにも、先日米国が行った政策金利の緊急大幅引き下げ、昨日英国中央銀行の政策金利引き下げに加えて、欧州中央銀行の政策金利の引き下げがあったらと、私は残念に思いました。もうこれ以上、米国に派手なパフォーマンスを期待できません。
回りの意見に左右されない泰然とした頼もしい欧州中央銀行なのか、それとも図体が大きく小回りが利かない欧州中央銀行なのか。今後が注目です。
ユーロは政策金利を据え置いたにもかかわらず、ドルに対しても、円に対しても通貨ユーロは弱含んでいます。ユーロが安くなれば、ますますインフレ懸念が高まり、政策金利の引き下げに躊躇することになります。ユーロ経済も転換期に入ったのではないでしょうか。
そんな米国、欧州、新興国を眺めてみると、安定を目指したマネーが消去法で、期待がはげきった日本を一時避難先として注目すると私は見ていますが、果たしてどうなることでしょうか。