私は株式の専門家ではありませんが、個人投資家として最近おかしいのではと思うことに、「日本株式の水準はPER(株価収益率)で割高」という取り上げ方です。
確かに、PERの水準は他国の水準がPER10倍程度である中で、日本は36倍と高いわけですから、このモノサシで計れば割高だと見るのは当然だと思います。ただし株価収益率は「株価÷一株利益」を計算したものですから、その一株利益の想定に妥当性があることが前提です。
「現在一株利益は10円の予想だけど、製品の売れ行き状況の途中経過を見ると、上方修正がありそうだ」という、成長度合いの大きさを予想する好景気にはPERは有効ですが、現在のように、すぐ先の業績見通しさえも読むことが難しい、赤字企業続出の投資環境では、株式投資のモノサシとして、PERの数字がどれほど使えるのでしょうか?
むしろ日本のPER36倍である事実を元に、「海外株式のPER水準はなぜ10倍なのか?」「海外株式のPERは日本のように倍率が高まる方向にあるのか」を聞きたいところです。
赤字の会社の価値をPERでどうやって評価するのでしょうか?今後更に景気が冷え込むかもしれないという現状で、来期の見込み数字に、どれほどの確実性があるのでしょうか?
むしろ、日本企業は来期のスタートを軽くするため、悪い決算数字を前倒しに出していると評価するのは見当違いなのでしょうか?海外企業も日本と同様に、赤字決算を表に出した結果の数字なのでしょうか?
現在のような、利益見込みの数字が当てにならない環境では、残存者利益を得ることが可能な企業であるか、生き残る企業であるか、のほうが投資対象として重要だと私は考えます。
つまり、PERよりもPBR、そして解散価値(一株純資産)が妥当な計算であるか、のモノサシのほうが重要だと考えます。
私の友人であり、株式の専門家である「鈴木一之」氏は、
「市況関連株はPERの高いときこそ投資のチャンス」と案内します。
たとえば、「新日鉄」は鉄の需要が旺盛で鉄の値段が高いときは利益がたくさん上がっているので株価は高いけど、PER(株価収益率)は低い。そのときは業績がピーク近辺にあるのだから投資は慎重にすべし。
逆に鉄の需要が少なく、鉄の値段が下がっていれば、当然業績は芳しくなく利益が薄く、株価は低迷、PERは高い。新日鉄に投資して大きくもうけるチャンスは、PERが低いときと高いときとではどちらのほうが妙味があるのだろうか。鉄の値段が安く、鉄の需要が少ないときに買ったほうが可能性が高い。「PERが高い」は「常に割高」とは言えない。・・・という考え方。
「PERが高いから割高で投資妙味がない」。
「PBR割安」かつ「PER割高」のなかには、将来も生き残っていき投資妙味のある企業が隠れている・・と私は考えています。