売れ行きが鈍ってくると、どうしたら売り上げが伸ばせるのかと頭を悩ますのは当然です。「他でどんなものが売れているのか」と売れ筋商品をリサーチし、それに遅れまいとする。他がおまけをつけて販促していれば、うちもおまけをつけなければならないと慌てた対応をする。
今年に入ってからは特に難しい投資環境が続いています。これから投資を考えている人も投資に迷っていますが、すでに投資されている人も「このままでよいのか」と現状に迷っています。
一度気になると、不安な気持ちはどんどん大きくなり、そして不安の数も増えていきます。今は「何が儲かるか」と見回すよりも、「何が不安なのか」と自分が抱えている不安な気持ちを整理するほうが大事なのかもしれません。
実際、金融庁には苦情・相談件数が急増しているそうです。もし金融機関が一過性の投資ブームではなく、今後も投資の窓口として信頼を得たいと考えるのであれば、これまで販売してきた投資家との対話を重視し、不安解消のサポートとして何ができるのかを一緒に考える機会を増やしたほうが将来にプラスになるのではないでしょうか。
投資家は不安であれば声を上げましょう。「あうん」の呼吸はあり得ません。「私はこんな不安を持っているが、どう考えたらいいのだろうか」。言葉に出さなければ相手には伝わりません。
投資商品は常に価値が上下するもの。優れたものでも、値下がりすることは当然あります。「何故値下がりしているのか」。値下がりしている根拠が分かれば安心します。「今後の見通しはどうなのか。最悪の事態として、どの程度の下げを覚悟したらよいのか」。相場の下げ過程で楽観的な見通しを聞いても、そのときは救われますが、その後更に下げると気持ちが弱くなります。むしろ最悪の事態を覚悟して、今どうすべきかを一緒に考えてもらう方が数段意味があると思います。もし不安な気持ちを伝えても、前向きな対応が見られず、ただ自分の売りたい商品を押し付ける窓口であれば、いざというときに頼りにできないかもしれません。今はそれを確かめる良い時期かもしれません。